令和5年7月13日から、性犯罪に関する規定が改正されました。本稿では、不同意わいせつ罪・性交同意年齢引上げとその影響について解説します。

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の最新改正内容の概要を教えてください。

最近の改正では、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪に関して、以下の4点が改正されました:

  1. 強制わいせつ罪・強制性交等罪の「暴行」・「脅迫」要件、準強制わいせつ罪・準強制性交等罪の「心神喪失」・「抗拒不能」要件の見直し。
  2. 性交同意年齢の引き上げ。
  3. 身体の一部や物を挿入する行為の取り扱いの変更。
  4. 配偶者間での不同意性交等罪の成立を明確化。

性犯罪の被害者は、恐怖や羞恥心から、被害を訴えることが困難な場合が多々あります。また、強い恐怖・驚愕に襲われたときの人の生物学的・心理学的・精神医学的反応について理解することも重要です。このような性犯罪の特徴を前提に、性犯罪の規定の在り方について検討が進められた結果、今般の法改正が実現しました。

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の特徴を教えてください。

これらの罪は、被害者が自由な意思決定が困難な状態で性的行為をされた場合に適用されます。改正前の法律では「暴行」・「脅迫」などの要件に基づいて判断されていました。しかし、被害者の意に反する性交の態様は、暴行・脅迫に限りません。例えば、身近な者による暴行・脅迫以外の方法。優越的な地位を利用したり、日常的につらくあたったりするなどして、被害者を思い通りに従わせるような手口があります。被害者の知慮浅薄に乗じて性交などを迫る行為も同様です。性交等に同意していない被害者に対し、その意思に反して行う性交等は、被害者の尊厳を傷つける行為であることは明らかです。

新しい定義では、

・「暴行」・「脅迫」・「障害」・「アルコール」・「薬物」・「フリーズ」・「虐待」・「立場による影響力」が原因となって、

・被害者が同意しない意思を形成、表明、または全うすることが困難な状態にあるかどうか

が重視されます。

改正により処罰の範囲は拡大したのでしょうか。

改正は、処罰の範囲を拡大するものではなく、より明確で一貫性のある基準を設けることを目的としています。これにより、性犯罪の判断におけるばらつきが減少し、適切な処罰が可能になると考えられます。

「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」とは何ですか。

・「同意しない意思を形成することが困難な状態」とは、性的行為をするか否かの意思決定に必要なきっかけや能力の不足により、性的行為をしないという意思を持つこと自体が難しい状態を指します。

・ 「同意しない意思を表明することが困難な状態」とは、性的行為をしないという意思を有するに至ったものの、それを外部に表すことが困難な状態をいいます。

・「同意しない意思を全うすることが困難な状態」とは、性的行為をしないという意思を外部に表すことは可能であったが、その意思のとおりになることが難しい状態をいいます。

「嫌だ」と言っても性的行為をされた場合、相手方は処罰されないのでしょうか。

被害者が「嫌だ」と表明しても、暴行や脅迫などによりその意思が尊重されない場合、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立する可能性があります。

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の原因となる行為・事由の例を教えてください。

法律では、暴行や脅迫、心身の障害、アルコールや薬物の影響、睡眠状態、意思決定の機会がない状況、予想外の事態による恐怖や驚愕、虐待に起因する心理的反応、経済的・社会的地位に基づく影響力などが例示されています。

性交同意年齢の引き上げの理由は何ですか。

性交同意年齢が16歳未満に引き上げられたのは、13歳以上16歳未満の者が性的行為に対する自由な意思決定を行う能力が十分に備わっていないと考えられるためです。

13歳以上16歳未満の者との性行為で、なぜ5歳以上年長者の行為のみが処罰されますか。

この年齢層の者との性行為において、年齢差が大きいほど対等な関係が成立しにくいと考えられるため、5歳以上年長者の行為が特に処罰の対象とされています。

年齢差が5年未満の場合、関係は常に対等と見なされますか。

いいえ、年齢差が5年未満であっても、関係が常に対等とは限りません。性的行為が被害者の同意なく行われた場合、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立する可能性があります。

「性交等」の定義と改正内容を教えてください。

改正前は「性交等」は陰茎の膣、肛門、口への挿入を指していましたが、改正後は膣や肛門への陰茎以外の身体の一部や物の挿入も含まれるようになりました。

配偶者間でも不同意性交等罪は成立しますか。

改正前も配偶者間の性犯罪は成立するとされていましたが、今回の改正で条文上明確化され、配偶者間でも不同意性交等罪が成立することが確認されました。

16歳未満の者に対する面会要求等の罪について教えてください。

この罪は、16歳未満の者に対して性的な目的で面会を要求する行為、面会する行為、性的な姿態の写真や動画を送るよう要求する行為などを処罰するものです。

性犯罪の公訴時効期間の延長理由は?

性犯罪は被害申告が難しい特性があるため、公訴時効期間が延長されました。これにより、被害者が申告しやすくなる期間が確保され、犯人の処罰が可能になります。

①性犯罪について、公訴時効期間がそれぞれ5年延長されました。

・不同意わいせつ等致傷、強盗・不同意性交等の罪など…15年→20年

・不同意性交等、監護者性交等の罪…10年→15年

・不同意わいせつ、監護者わいせつの罪など…7年→12年

②上記①の期間に加えて、被害者が18歳未満の場合は、被害者が18歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した機関が公訴時効期間となります。

(例)15歳時の不同意わいせつの被害の場合、時効期間は、15年(12年+3年)後になります。

公訴時効期間の延長期間の基準は?

公訴時効期間の延長期間は、被害申告までの一般的な期間を考慮して5年とされました。これは、性犯罪の被害者が申告するまでの平均的な時間を基に決定されています。

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