事例問題:今さら既婚者だなんて言われても…。

事例

相談者:
小林香織(40歳・女性)
・大学院を卒業後、会社を設立し、経営者として成功している。
・自立したキャリアウーマンで、仕事に情熱を注ぎながらも、家庭を持ち、子供を産むことに強い願望を持っている。
・真面目で信頼を重んじ、人を疑うことが少ないが、裏切られたと感じると強い正義感を持って立ち向かう。

相談内容:
会社を経営する40歳の女性です。仕事では多くの成功を収めてきましたが、個人的な生活では、家族を持つという長年の夢を抱えています。大学院で学び、事業を立ち上げることができました。私の生活は安定しており、子どもを持つことが私の次のステップだと感じていました。

しかし、この夢は、かつて交際していた男性によって壊されました。彼はYさんといいます。Yさんとはa大学の同窓会で知り合い、その後、約3年半にわたって交際しました。私は、Yさんの誕生日に特別なメッセージを送り、Yさんに私の自宅の鍵を渡すなど親密な関係を築きました。私の家族を交え、Yさんと一緒に旅行に行ったこともありました。私たちの関係は深まり、彼が私と家庭を築く意思を持っていると信じてしまいました。

私は、Yさんと交際を始める前は、結婚相談所に登録したり、生殖補助医療により子どもを持つための準備を進めていました。しかし、Yさんとの交際により、生殖補助医療を中断してしまいました。

その後、彼が既婚者であり、3人の子供がいることを知りました。彼はこれを隠し続け、私の貞操権と子を産む機会を奪いました。挙げ句、彼は「(自分が)既婚者でないと言ったことはない」「子供を望んでいたなんて聞いてない」などと言うのです。彼の行動により、私は深い精神的苦痛を経験し、うつ病を発症しました。これによる通院治療費もかかりましたし、私の精神的苦痛も大変なものでした。

私は被害者であり、信頼と愛情を裏切られました。法的な観点から、彼に対する不法行為責任の追及と損害賠償についてのご助言をいただきたいです。このような場合、法的な対処はどのように行われるべきでしょうか? 彼に対してどのような請求を行うことができますか?

よろしくお願いします。

状況の整理

小林さんが置かれた状況を簡潔に整理すると以下の通りです:

小林さんとYさんの交際

  • 小林さんはYさんと出会い、交際を始めました。Yさんは既婚で子がいるにもかかわらず、この事実を小林さんに隠しました。
  • 両者はメッセージのやりとりを頻繁に行い、実際に会って性交渉を含む交際を続けました。
  • 小林さんはYさんとの将来を信じ、元々受けていた生殖補助医療を中断しました。

交際中の小林さんの行動

  • 小林さんは、Yさんの誕生日に特別なメッセージを送り、Yさんに自宅の家の鍵を渡すなど親密な関係を築きました。

交際の終了とその影響

  • 小林さんは、約3年半の交際後にYさんが既婚者であることを知り、ショックと失望を受け、関係が終了しました。
  • 小林さんはその後、生殖補助医療を再開しましたが、成功しなかったことで子を持つ機会を失いました。

法的な争点

  • 不法行為の成否:Yさんは小林さんによって貞操権とリプロダクティブ・ライツを侵害されたと主張しています。
  • 損害賠償の請求:小林さんは、Yさんによる精神的な苦痛と経済的損失に対して慰謝料を請求しています。

貞操権の侵害

このケースについて、私の見解を述べさせていただきます

まず、小林さんが結婚と子どもを望んでいたことは、彼女が結婚相談所に登録したり、生殖補助医療の準備をしていたことから明らかです。しかし、Yさんは既婚者であるにも関わらず、この事実を小林さんに伝えずに関係を続けました。これは、小林さんがYさんとの婚姻を期待していたことを考えると、貞操権の侵害が成立すると考えられます。

Yさんの主張については、単に独身であると偽っていないという点では不法行為が成立しないというものです。しかし、Yさんが小林さんの家族と共に旅行に行ったり、小林さんの家に深夜に訪れたりするなどの行動を見ると、彼が独身であると小林さんを誤信させるような行動をしていたことは明らかです。従って、Yさんの主張は採用できないと私は考えます。うつ病の発症がYさんの行為と因果関係があることを立証するのは難しいかもしれませんが、貞操権の侵害は認められる可能背は高いでしょう。

リプロダクティブ・ライツの侵害

また、小林さんがYさんとの関係のために生殖補助医療を中断したことにより、彼女が子どもを持つ機会を失ったことも重要です。これは、Yさんの行為が小林さんのリプロダクティブ・ライツ(自分の身体に関することを自分自身で選択し、決められる権利)を侵害したといえるでしょう。

Yさんが小林さんの婚姻願望や子どもを望む気持ちを知らなかったとする主張に関しても、小林さんがYさんとの関係を真剣に考えていたことは明らかです。Yさんの行動も、小林さんの願望を認識していたことを示唆しています。

慰謝料の金額は数百万円になる場合も

損害賠償の額に関しては、小林さんが精神的苦痛を受けたことは疑いようがありません。しかし、具体的な金額を算定するのは難しいです。Yさんの不法行為により小林さんが精神的苦痛、特に3年半という長い交際期間や、子を産む機会を実質的に奪われた点を考慮すると、慰謝料として数百万円は認められる可能性もありそうです。

これらの点を踏まえると、小林さんの請求は認められる可能性が高いでしょう。このような場合、弁護士に相談し、任意の交渉や訴訟を通じて紛争を解決するべきでしょう。

永真法律事務所では、上記のような男女問題も取り扱っています。いつでもお問い合わせください。

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