少年事件の基本

少年とは、20歳未満の人を指します。非行を犯した少年は家庭裁判所で審理されます。これらの少年は、大きく3つのカテゴリーに分けられます。第一に、14歳以上で犯罪を犯した「犯罪少年」、第二に、14歳未満で犯罪行為を行ったが刑事責任を問われない「触法少年」、そして第三に、将来的に犯罪を行い,又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがあると認められる「ぐ犯少年」です。

家庭裁判所は、犯罪少年に対して、死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件について,調査又は審判の結果,その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、検察官に事件を送致します。特に、意図的な犯罪行為で被害者が死亡した事件において、16歳以上の少年が関与している場合は、原則として検察官に送致しなけれればなりません。

検察官は、家庭裁判所から事件を受け取った後、特定の例外を除き、起訴しなければならないとされています。

犯罪少年、触法少年、ぐ犯少年に対する家庭裁判所の決定には、都道府県知事や児童相談所長への送致(18歳未満の場合)、保護処分(保護観察、児童自立支援施設や児童養護施設への送致、少年院送致など)が含まれます。

また、家庭裁判所が少年審判において検察官の関与を決定した場合、もし少年に弁護士が付添人としていない場合は、家庭裁判所は国選付添人を付さなければなりません。

国選付添人と私選付添人

少年、その保護者や法定代理人、保佐人、配偶者、直系親族、兄弟姉妹は、付添人を指名する権利を持っています(少年法法10条)。少年やその保護者などによって選任された付添人は「私選付添人」と呼ばれます。

2000年の少年法改正時に、審判に検察官が関与する制度が導入され、検察官関与事件では国選付添人が必要とされ、ここで初めて国選付添人制度が設けられました。しかし、日本弁護士連合会は、身体拘束された少年全員に付添人が必要だと主張し、国選付添人制度の拡張を求めてきました。2007年11月には、一定の重大事件に限り、検察官関与を前提としない国選付添人制度が導入されましたが、この制度の対象は限定的であり、年間の国選付添人選任件数は400〜500件程度でした。

2008年の少年法改正では、被害者の審判傍聴が認められる場合、弁護士である付添人の意見を聞くことが必要とされ、少年に付添人がいない場合は国選で選任されることとなりましたが、国選付添人が選任されるケースは依然として限られていました。2009年6月以降、被疑者国選弁護制度が拡大され、死刑や無期懲役、3年以上の懲役・禁錮を伴う重大な犯罪事件においては、被疑者国選弁護人が選任されるようになりましたが、家庭裁判所送致後の国選付添人の選任は重大事件に限られ、継続して活動することが困難な状況が生じました。

日弁連の活動の結果、2014年の少年法改正により、国選付添人制度の対象事件が拡大され、被疑者国選弁護制度と同様の範囲になりました。しかし、2018年に被疑者国選制度の対象事件がさらに拡大されたため、国選付添人制度との間に再び差が生じています。国選付添人の選任率は増加していますが、家庭裁判所の裁量に委ねられており、身体拘束された少年全件での選任には至っていません。

観護措置を受けた少年には、可能な限り国選付添人が選任されるべきです。しかし、家庭裁判所が国選付添人を選任しない場合、法的支援を必要とする少年を放置するわけにはいきません。多くの場合、少年自身やその保護者は弁護士費用を負担することが難しく、私選付添人の選任に消極的なこともあります。このため、多くの私選付添人は、日弁連が法テラスに委託している少年保護事件付添援助制度を利用することになります。この制度を利用した付添人は、法的地位は私選付添人となりますが、「援助付添人」とも呼ばれます。

付添人の活動

少年審判は、少年の未来に大きな影響を与える可能性があります。家庭裁判所調査官は、審判の数日前に調査を終えて調査官意見を提出します。裁判官は、審判前にこれら全ての記録を確認して心証形成します。審判において、裁判官少年や保護者への質問を通じて結論を出しますが、審判前における付添人の活動が審判の結果に大きな影響を及ぼすことは明らかです。それでは、少年事件における付添人の主な活動内容を見ていきましょう。

少年との面会

少年の多くは、不安や恐れを感じています。付添人は、これらの少年に面会し、彼らの心情を理解し、事件に対する適切な対応を行います。

保護者との連携

少年の処遇において、保護者の役割は非常に重要です。付添人は、保護者と連携し、少年の更生と社会復帰を支援します。

記録の閲覧と情報の取扱い

付添人は、原則として、少年の事件に関する全ての記録を閲覧する権利を有しています。家庭裁判所の記録には、捜査機関から送付された記録(法律記録)、調査官意見や少年鑑別所での鑑別結果等を綴った記録(社会記録)があります。情報の取扱いには慎重さが求められます。

被害者対応

少年審判では、被害者との関係も重要です。付添人は、被害者に対して少年や保護者の謝罪の意を伝えるなどし、示談を進めることも重要な役割の一つです。被害者の感情を理解し、少年に伝えることで、少年の内省を深めることができます。被害者としても、連絡先を少年や保護者に知られずに話を進めることができるため、被害感情が悪化する可能性を低減できます。

家庭裁判所調査官、裁判官との面談

家庭裁判所調査官は、心理学、教育学などの知識や技法を用いて、少年の性格、行動傾向、交友関係、家庭環境、学校・職業環境など多くの事柄を科学的・専門的に調査します。付添人は、家庭裁判所調査官と連絡を取り、調査官の指摘する少年や保護者の問題点を把握し、少年の更生に向けた環境調整を行います。また、付添人は裁判官とも面談し、処遇に関する意見を直接伝えるという活動も行います。

試験観察中の付添人活動

裁判官は、少年に対する適切な処遇選択をするために必要な場合、おおむね3か月か4か月までを一応のめどとする相当の期間、少年を家庭裁判所調査官の観察に付すことがあります。これを「試験観察」といいます。試験観察においては、家庭裁判所調査官が、少年の動向を観察しつつ生活環境の調整や学校・職場との連絡等を行い、その間の少年の成績を考慮の上、最終的な処分が決定されます。試験観察が決定された場合、付添人は少年の支援を続けることが期待されます。

付添人意見書の提出

付添人は、少年や家族に対する働きかけの成果を付添人意見書に記載し、家庭裁判所に提出します。この意見書は、審判前に提出することで、少年の処遇に大きな影響を与えることができます。

審判での役割

審判では、付添人は少年や保護者に適切な質問をし、意見を述べることが求められます。これにより、少年の反省や更生の意欲を裁判官に伝えることができます。

まとめ

少年事件と国選付添人の役割を理解することは、少年の更生と社会復帰を支援する上で非常に重要です。少年法の改正により、より多くの少年が適切な法的支援を受けられるようになりました。付添人は、少年の権利を守り、適切な処遇を確保するために不可欠な存在です。

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