私は能登半島地震の被災者で、生活保護を受給しています。もし義援金を受け取った場合、生活保護は停止されるのでしょうか?

生活保護を受けている方が義援金を受け取る場合、その金額が生活再建に使用される限り、通常は収入として考慮されず、生活保護の停止にはつながりません。

基本原則

生活保護受給者が生活保護基準を超える収入を得た場合、一般的には、生活保護の支給額が減少するか、または停止されることになります(生活保護法第25条2項、第26条)。

生活保護法25条2項

(職権による保護の開始及び変更)
第二十五条 
2 保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、速やかに、職権をもつてその決定を行い、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。前条第四項の規定は、この場合に準用する。

生活保護法26条

(保護の停止及び廃止)
第二十六条 保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。第二十八条第五項又は第六十二条第三項の規定により保護の停止又は廃止をするときも、同様とする。

義援金の収入認定

大規模地震などの災害時に生活保護受給者が受けることがある義援金や災害弔慰金、被災者生活再建支援金等は、一般的に収入とはみなされないことが多いです。

 東日本大震災の際は、厚生労働省社会・援護局保護課長の通知「東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)」平成23年5月2日社援保発0502第2号)によって、下記の事項が示されました。

・義援金等の生活保護制度上の収入認定の取扱いは、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務官通知)第8の3(3)のオに従い、「当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」を収入として認定しないこととし、その超える額を収入として認定すること。

・自立更生計画の策定に当たっては、被災者の被災状況や意向を十分に配慮し、一律・機械的な取扱いとならないように留意すること

・震災後、緊急的に配分される義援金などについては、費目・金額を積み上げずに包括的に一定額を自立更生に充てられるものとして自立更生計画に計上して差し支えなく、使途についても確認する必要はないこと。

・自立更生のために充てられる費用であれば、直ちに自立更生のための用途に供されるものでなくても、実施期間が必要と認めた場合は、預託することなく、自立更生計画に計上して差し支えないこと。

そして、前記の通知は、熊本地震の際の通知にも引用されています(平成28年4月27日厚生労働省社会・援護局保護課保護係長事務連絡「平成28年熊本地震による被災者の生活保護の取扱いについて」)

このように、災害時における義援金等は、「収入」とはみなされないのが通例です。

生活保護を打ち切られるケースも

しかし、過去の例(東日本大震災、熊本地震)では、義援金が収入として認定され、生活保護が停止されるケースもありました(「生活保護打ち切り 376世帯、義援金など理由」毎日新聞)

義援金受領によって生活保護費が減額・停止される結果、支援が必要な人々が義援金の受領を躊躇し、かえって被災者の生活再建が困難となっては、義援金や生活保護制度の趣旨に反してしまいます。これに関連し、日本弁護士連合会も、義援金の収入認定に関し会長声明を出しているところです(「生活保護世帯が受給する平成30年7月豪雨災害における義援金の収入認定に関する会長声明」日本弁護士連合会)

弁護士の助言

義援金受領により生活保護が減額・停止されるケースがありますが、これは義援金や生活保護制度の本来の目的に反しています。このような状況に直面した場合、行政不服申立てや訴訟を通じて生活保護の停止を争うことができます。

まとめ

義援金の受け取りと生活保護の関係は、生活再建において重要な問題です。不安や疑問がある場合は、専門家に相談してください。永真法律事務所では、皆様の安心をサポートします。お気軽にお問い合わせください。

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